質問: 子供が成長するにしたがって顎が大きくなってくるように思うけれど、ガタガタの歯並びが良くなることがあるの?
そんな感じ、しますよね。
成長とともに顎が大きくなるから、充分スペースができて歯がきれいに並びそうですよね。
でも、すこし周りの人を見てください。
子供の歯並び(乳歯のときの歯並び)は、たいていきれいですけれど、大人の人の歯並びがそんなにきれいな人はあまりいませんよね。
おかしいですよね。 逆ですよね。
写真を見てください。2つの石膏の歯列模型があります。これは同じ人の乳歯列(子供の歯だけの歯並び)と生え変わったばかりの永久歯列(大人の歯だけの歯並び)を比較したものです。
たぶん右が3、4歳ぐらい、左が11歳ぐらいと思われます。
左の永久歯列のほうが大きくなっていますが、違いは何でしょう?
そう、写真の中央を走っている横線から下に大きな歯が生えてきているからです。 これが、6歳臼歯(第一大臼歯)です。そして、さらに年をとると、12歳臼歯(第二大臼歯)、親知らず(第三大臼歯)と生えてきて歯列はさらに大きくなります。
ここで、もう一度写真を良く見てください。では歯が生え変わる部位はどこでしょう。
そうですね。横線より上の10本の歯から出来ている歯列の部分です。
この部位の歯列を左右比較してみてください。左は3角形、右は半円形と形状はすこし違っていますが、大きさ(長さ)自体はそんなに変わっていませんよね。
実は、6歳臼歯より前の歯列の長さ(歯列周長といいます)はほとんど変わらないのです。
つまり歯列は大きくなるけれど
生え変わる歯のスペースは乳歯列でも永久歯列でもほとんど変わらない(大きくはならない)
ということです。
でも、よく歯を噛むと顎が大きくなるといいますよね。これはどういうことでしょう。
たしかに、歯は横に広がります。
成長とともに上顎の歯は歯体移動(平行移動)、下顎の歯は傾斜移動をして側方に広がります(このあたりは私の大学での研究テーマのひとつでした)。
でも、残念ですが、ガタガタの歯並びの人がきれいに並ぶほど大きく広がるわけではありません。
ですから、歯並びが良くなるか悪くなるかは、すべて歯が生え変わらなくても、前の歯が生えてきた時点である程度予測がつくわけです。