質問:矯正は大人でもできるの?
歯並びを良くする歯列矯正は、実は何歳からでもはじめることができます。
60歳からであっても70歳からであってもとくに問題はありません。
ただ、年齢によってやり方や注意しなければいけないことが異なってきます。
大人になって行う矯正と成長期におこなう矯正とには、次のような違いや長所・短所があります。
長所: 矯正する本人が、歯並びを治したいという意思があって始めるために、矯正治療に積極的・協力的である場合が多い。
よって、お願いしたことをちゃんとやっていただける。
たとえば、取り外しができる装置の装着を指示通り正しく使用してもらえる。
また、矯正期間中、口腔内のケア(歯磨きなど)を充分に行ってもらえる。
さらに、アポイントを比較的正しく守っていただけるなどです。
これらのことは、意外と感じられるかもしれませんが、矯正がうまくいくかどうかにとってかなり重要なファクターです。
よって、本来は、子供に比べて骨が硬くて歯が動きにくいために子供より治療期間が長くなると予測されるのですが、(症例にもよりますが)意外に早く終了できるケースも多いです。
欠点: 大人の方の場合、当然骨の成長は終了していますので、子供のようにこれを利用した治療はできません。
成長期の子供の矯正でよくおこなわれている上顎の成長を促進しながら下顎の成長方向を変えることによって「受け口」を治したり、逆に、上顎の成長を抑制して下顎の前方への成長を促進することによって「出ッ歯」を治すという骨の成長を利用した治療法は使えません。
また、大人であっても歯の凸凹自体は簡単に治すことはできるのですが、歯と歯の間の骨がその変化についていくことができないことがあります。
その場合、歯がまっすぐに並んだ後、歯と歯の間に隙間が目立つようになることがあります(ただし、これをカバーする方法はいろいろとあります)。
また、虫歯や、歯周病になっている可能性が大きいので、これを考慮して矯正治療をおこなわなければなりません。
質問:矯正する期間はどれくらい?
当然のことですが、症状の程度によって、また上下顎全体を治したいか、一部だけ治したいたいかによってその期間は異なってきます。
ただ、目安として一般的には次のように考えていただければいいと思います。
全体を治したい場合 : 永久歯が生えそろってから2年間
一部だけ治したい場合: 半年~1年
「でも、女性週刊誌などで、2~3回で治る矯正とかスピード矯正とかいう広告を見たことがありますが、あれはできますか?」という質問を受けることがあります。
私の答えは「矯正治療だけではできません」です。
考えてみてください。
骨の中にいろいろな方向に生えている歯が、2,3回の来院でまっすぐなるよう動かせるわけがありません。
あれは(確証があるわけではありませんが)歯を削って、頭の部分だけまっすぐに並んでいるように見える「かぶせもの」をつけている場合が多いようです。
またスピード矯正の場合、外科手術を併用して矯正期間を短くしている場合が多いようです。
「骨の中に植わっている歯にすこしずつ力を掛けて動かして歯をまっすぐ並べる」矯正治療だけで、そんな魔法のようなことは不可能です。